いつもの坂道を登って行くと、大きな猫みたいな動物がのそのそ歩いていた。そいつが振り返った。
「ア! 猿だ!」ヘルヒエンが走り出した。
ウェストポーチからデジカメを取り出し、シャッターを押そうとして転びそうになった。
猿も気がついて走り出した。当然、野生の猿と腹の出たヘルヒェンではスピードが違った。
引き離した猿は道端で暫くこちらを眺めてから林の中に悠然と姿を消した。
ゼーゼーしながらヘルヒェンが言った。「そう言えば、何日か前に回覧板が廻って来たな。
『最近、三島市内で猿が出没しております。
猿を見かけたら窓を閉め、特に小さなお子さんは外に出さないで下さい。』読んだか?」